多くの工務店で、紙のニュースレターは、すでに当たり前の存在になっています。
事務員さんが中心となってまとめ、毎月、あるいは隔月で、きちんと発送されている。
ここまで続けてこられたこと自体は、簡単なことではありません。
それでも最近、こんな感覚はないでしょうか。
「ニュースレターは出している。でも、それが決め手になっている感じはしない」
問い合わせが増えるわけでもない。
すぐに反応が返ってくるわけでもない。
出していない工務店との差が、正直よくわからない。
だから、
「まあ、こんなものだろう」
と、どこかで割り切ってしまっている。
もし、そう感じているとしたら、それは、やり方が間違っているからではありません。
ニュースレターに求められている役割が、いつの間にか変わっている、ただそれだけのことです。
そして今、その変化についていけている工務店は、実はそれほど多くありません。
事務員さんには書けないことがある
誤解してほしくないのですが、これは「事務員さんの能力」の話ではありません。
むしろ、
事務員さんが担当しているニュースレターほど、構成は整っていて、読みやすいことが多い。
- 行事のお知らせ。
- 完成見学会の案内。
- 季節の挨拶や、社内の近況。
どれも、間違ってはいません。
ただ、今のお客さんが本当に知りたいこととは、少しズレてきています。
今、家づくりを考えている人は、
「どんな家を建てているか」よりも、「この会社は、どういう判断をするのか」
を見ています。
たとえば、
- なぜ、あの仕様をおすすめしないのか
- なぜ、値引きの話になると、はっきり断るのか
- なぜ、すべての要望を受けないのか
- なぜ、このお客さんとは契約しなかったのか
こうした話は、現場や経営の判断をしている人にしか書けません。
そして同時に、簡単には文章にしづらい内容でもあります。
事務員さんが書こうとすると、どうしても「無難」になります。
- 角が立たない表現。
- 誰も傷つけない言い回し。
- どこの会社でも通じそうな内容。
それは当然です。
立場上、そうならざるを得ない。
結果として、読んだ人の印象はこうなります。
「ちゃんとしている会社だな」でも、それ以上でも以下でもない。
一方で、社長の考えが、少しでもにじんでいるニュースレターは違います。
完璧な文章である必要はありません。
むしろ、少し不器用な言葉のほうが、「この人が書いている」と伝わります。
- ここだけは譲れない
- 正直、大変だったこと
- 最近、見つけた素材の話
こうした断片が少しずつ伝わると、読み手は無意識にこう思います。
「この会社を選べば、間違いない」
文字にしなくても、行間から伝わる。これがニュースレターの本来の力です。
だから問題は、「事務員さんが書いていること」ではありません。
社長の判断が、外に出ていないことです。
ニュースレターが、単なる情報の連絡になってしまうと、お客さんが迷ったときの判断材料にはなりません。
今、必要なのは、上手な文章ではなく、判断の背景が伝わること。
それが書けるのは、やはり社長しかいないのです。
「社長が関わる」とは、どういうことか
ここまで読むと、「結局、社長が全部書けという話なのか?」
そう感じた方もいるかもしれません。
でも、それは違います。
ニュースレターにおいて社長が関わるとは、文章を書くことではありません。
関わるべきなのは、
- 「何を書くか」
- そして、「なぜ、それを書くのか」
この部分です。
たとえば、社長ご自身が、
- 今月の現場の写真をまとめる
- それに対しての、素朴な疑問に答える
- 最近、お客さんと話した内容を整理する
- 今、取り組んでいることや、気づいたことを共有する
これらを雑談感覚で話すだけでも、十分な素材になります。
ここで重要なのは、素材を引き出す視点です。
社内にいると「当たり前」と感じることは、どうしても質問できません。
一方で、社外から整理する場合、あるいは現場を知っている立場で整理する場合は、
- 「なぜこうしたのか?」
- 「ここにはどんな理由があるのか?」
と自然に掘り下げることができます。
このように整理された情報は、
お客様目線とプロ目線の両方を兼ね備えた素材になります。
そのまま文章化するだけで、ニュースレターの価値は格段に高まります。
文章にするのは誰でもできます。
でも、読み手に響く内容を引き出す力があるかどうかが、ニュースレターの質を決める最大の違いです。
まとめ
紙のニュースレターを出している工務店は、決して少なくありません。
事務員さんがまとめ、決まったペースで発送し、きちんと続けている。
それだけでも、十分に評価される取り組みです。
ただ、今の市場では、
「出している」だけでは足りなくなってきています。
家づくりを検討する人は、これまで以上に迷っています。
比較し、立ち止まり、先送りする。
そのときに必要なのは、商品説明でも、価格表でもありません。
- 「この会社は、どういう判断をするのか」
- 「この社長は、何を大事にしているのか」
その軸が、自然に伝わっているかどうかです。

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