人数が少ない会社ほど、「うちは共有できている方だ」と思いがちです。
顔を合わせる機会も多いし、
同じ現場を見て、同じ空気を吸って仕事をしている。
だから、わざわざ細かく説明しなくても、だいたい分かっているはずだ、と。
ところが実際には、
少人数の工務店ほど、「伝わっているつもり」が、ズレていることが少なくないのです。
少人数の工務店でも起きる「共有のズレ」とは
例えば、こんなことはないでしょうか。
- 「前にも言ったよね」と思ったら、相手は覚えていない
- 話したはずの内容が、現場では違う形で進んでいる
- 大事な決定事項なのに、人によって受け取り方が違う
人数が少ないからこそ、
「確認しなくても大丈夫だろう」
「今さら聞くのも悪い」
そんな遠慮や思い込みが積み重なります。
結果として、
- 言った側は伝えたつもり、
- 聞いた側は分かったつもり
という状態が生まれます。
共有は「言ったかどうか」ではなく「同じ判断ができるか」
情報の共有は、「言ったかどうか」「メモに残したかどうか」で決まるものではありません。
本当の共有とは、もう一度同じ場面になったとき、同じ考え方で、同じ判断ができるかどうかです。
つまり、結論だけでなく、
なぜ?そう判断したのか?という理由まで含めて伝わっているかが重要になります。
特に、現場仕事が多い工務店では、知識や経験の差によって、同じ説明を聞いても、受け取り方が変わることは珍しくありません。
結局、人は主観で物事を理解します。
そのため、その場では分かったつもりでも、数時間後、数日後には、記憶はそれぞれの解釈に書き換わっていきます。
こうしたズレは、能力や意識の問題ではなく、判断の理由まで共有する仕組みがないことによって起きています。
家族経営の工務店ほど増える「暗黙知」の問題
少人数の工務店、特に家族経営では、情報共有に困っていないように見えることが多いものです。
顔を合わせる機会が多く、分からなければすぐに聞ける。
長く一緒に仕事をしているから、「だいたい分かる」感覚もあります。
ですが、この「だいたい分かる」が積み重なるほど、
判断の理由は、言葉にならないまま残っていきます。
たとえば、
なぜこのやり方を選んだのか。
なぜ今回は、こう判断したのか。
結論だけは共有されても、なぜ?そう判断したのか?は、本人の中に留まったままになる。
これが「暗黙知(暗黙の了解)」です。
暗黙知そのものが悪いわけではありません。
経験から生まれる感覚は、工務店にとって大きな強みでもあります。
問題になるのは、
その判断をした人がいない場面で、同じ判断ができなくなることです。
確かに今は、携帯もあるので、簡単に聞くことはできます。
ですが、
- 忙しさが重なったとき、
- 判断を任せたい場面が増えたとき、
暗黙知は「共有されていない情報」として表に出てきます。
これは、家族経営だから起きるのではなく、家族経営ほど起きやすい問題なのです。
まとめ
情報共有の問題は、人数の多さや、社員教育の話ではありません。
少人数であっても、
家族経営であっても、
「伝わっているつもり」は簡単に生まれます。
原因は、
情報を出していないことではなく、
判断の理由が、人に紐づいたままになっていることです。
共有とは、
すべてを文章に残すことでも、
立派なマニュアルを作ることでもありません。
大切なのは、
「なぜそう判断したのか」を、あとからたどれる形で残すこと。
それは、
短いメモかもしれませんし、
写真や図面に一言添えたものかもしれません。
あるいは、
「次に同じ場面になったら、こう考える」と一言伝えることでも十分です。
少人数の工務店だからこそ、重たい仕組みは必要ありません。
判断の理由が、人ではなく、チームの中に残っていく状態をつくる。
それが、ブランドとチーム経営を支える、本当の情報共有です。

コメント